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知っておきたい母乳と育児用ミルクの違い

母乳も育児用ミルクもどちらも赤ちゃんが大きくなるための栄養ではありますが、その具体的な違いはご存じない方もいらっしゃるかもしれません。今回は母乳の良さと共に、母乳と育児用ミルクでは何が違うのか助産師の宮里風葵さんにお伺いしました。

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母乳と育児用ミルクはどちらでもいい?

医学的には赤ちゃんの栄養を考えると、「どちらでも良い」のではなく、「6か月までは母乳だけで育てるのが理想で基本」ということが世界的にも言われています。産院などでは、「どちらで育てたいですか?」と訊かれることがあるかもしれません。無理なく、要望に沿ってママ達を支援したいという思いからなのでしょう。しかし、現代の技術では、母乳の完全なコピーを作る事は不可能です。母乳の良さについては、広く知られてきてはいますが、赤ちゃんを健やかで安全に、自信をもって育てるためには、母乳と育児用ミルクの違いをきちんとわかっておくことも重要です。

赤ちゃんにとって栄養とは

私たちの身体にとって栄養の役割は、主に下記の3つの事があります。
(1)身体をつくる(骨、筋肉、血液、脂肪など)
(2)身体の調子を整える
(3)活動するエネルギーとなる

赤ちゃんにとっては、もう2つ重要なことがあります。
(4)免疫力を獲得する
(5)成長(大きくなる)・発達(身体が人間としての機能を獲得していく)

母乳は生きている!

妊娠中お腹にいた赤ちゃんは、お母さんの免疫によって外の病気から守られていました。産まれたばかりの赤ちゃんは、今度は自分の身体で微生物や菌・ウィルスなどによる感染症の危険性と闘わなくてはいけません。しかし、赤ちゃんの免疫力というものは、もともと備わっているものではないため未熟なのです。そこで、母乳が力を発揮します。母乳には、生きた成分が含まれています。例えば、免疫グロブリン、白血球や抗炎症作用などです。
お母さんの初乳が出る頃、つまり生後間もない頃の赤ちゃんの胃の容量はごくわずかです。それにも関わらず、免疫力が未熟な赤ちゃんが感染症にかかることなく過ごせるのは、初乳に免疫物質が高濃度で含まれているからなのです。

母乳は変幻自在のグルメ食

母乳は、赤ちゃんやママの状態に合わせて変化します。たとえば、ママが風邪をひいているときには、母乳中にもウィルスと闘うための抗体が含まれるため、赤ちゃんがウィルスと接する前に、母乳で守ることが出来ます。「赤ちゃんに風邪をうつしてしまうのでは?」と母乳をあげることをためらうママも多いようですが、風邪をひいている時こそ、母乳を与えた方が良いということです。
また、37週より早く赤ちゃんが産まれると、そのママから作られる母乳には、通常の母乳よりも、たんぱく質や、鉄、免疫物質が多く含まれています。そのため、小さく消化機能も未熟な赤ちゃんにぴったりで安心です。

それだけでなく、母乳の風味は常に変化しています。飲み始めよりも、後の方に飲む母乳の方がより多く脂肪が含まれています。また、家庭の食卓の味が違うように、赤ちゃんも、母乳を通して毎日いろんな味を経験します。そうすることで、いろいろなものを食べるための準備ができます。

母乳に足りないものがある、という誤解

育児用ミルクに豊富で、母乳に足りないものはありません。逆に、母乳にあって、育児用ミルクに足りないものはたくさんあります。母乳は、200種類以上の成分があり、まだ解明されていないものも多く存在します。ですから、母乳と同じ質を再現することは不可能です。そのため、育児用ミルクは、原料である牛乳を母乳に近づけようとして、いらないものを除き、母乳に近い成分に置き換え、足りないものを添加して作られます。

特定の成分に関しては、母乳に含まれる成分の濃度よりも、濃くなることがあります。例えば、鉄分です。しかし、ここで重要なことは、鉄の質が違うということです。母乳の鉄は育児用ミルクの鉄よりも少量で効率よく働きます。母乳とまったく同じにすることができないため、育児用ミルクでは量で補う必要があるのです。

育児用ミルクが必要になるとき

赤ちゃんの体重が増えない場合や、ママの病気など、特別な状況で母乳があげられない場合もあります。その際は育児用ミルクが必要になります。赤ちゃんが大きくならないという理由で育児用ミルクをあげる時、赤ちゃん側に病的なことがないかどうかを、きちんと確認する必要もあります。ミルクが必要になる場合には、医師に相談しながら、赤ちゃんの身体の異常がないかの確認や、成長などをきちんと診てもらいながら、適切に育児用ミルクを使っていきましょう。(「母乳が足りていないのでは?」と、心配になるとき、ミルクがあると助かると思う場合には、「母乳不足感を乗り越える」もぜひご覧ください。)

混合栄養と、母乳と量依存性について

母乳の効果の多くは、どれくらいの期間続けたか、どれくらいの量を飲ませたかに関係しています。たとえば、生後3ヵ月よりも長く母乳だけで育てると、中耳炎に罹る危険性は50%減ります。生後4か月よりも長く母乳だけで育てると、1歳までに下気道感染症で入院する危険性を72%減らせることができます。また、量に関わらず、消化管の感染症の発症率を64%減らすことができ、母乳を中止した後も2ヶ月はその効果が持続すると言われています。(参考;米国小児科学会「母乳と母乳育児に関する方針宣言(2012年改訂版)」のEXECUTIVE SUMMARY)ですから、混合栄養であっても、母乳をあげていることに変わりなく、続けるということでその恩恵をうけることができます。混合だから、と悩む必要はなく、とにかく赤ちゃんに必要な期間、続けるためにどうしたらよいかを検討する必要があるでしょう。

母乳以外で育てるときに重要なこと

母乳以外の栄養を赤ちゃんに与えるときに知っておくべき重要なことがあります。それは、育児用ミルクは、完全な栄養ではないということです。とくに、免疫物質や、DHAなど身体の成長・発達・健康、(特に脳の成長など)にとって重要なすべての成分を育児用ミルクだけで補うことはできません。

また、育児用ミルクを作るときに注意したいのが、使用する水の安全や消毒の問題です。さらに、間違った調乳方法によって、濃度が濃すぎたり、薄すぎたりすると、赤ちゃんを病気にさせてしまう可能性もあります。すべての赤ちゃんを安全に健康に育てるために、厚生労働省は育児用ミルクとして認められるための基準(「乳児用調製粉乳たる表示の許可基準」)を定めています。また、WHO(世界保健機関)では、「乳児用調製粉乳の安全な調乳、保存及び取扱いに関するガイドライン」を公表しています。(日本語仮訳 厚生省HPよりhttp://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/syoku-anzen/qa/dl/070604-1b.pdf

母乳育児は神話?

これまでの厚生労働省の調べによると、妊娠中の母乳育児に対する考え方について、「ぜひ母乳で育てたいと思っていた」「でれば母乳で育てたいと思っていた」を合わせた9割が「母乳で育てたい」と考えているそうです。それにもかかわらず、実際に母乳だけで育つ赤ちゃんは、0ヵ月児で5割弱、3ヵ月児では3割強にとどまっています。(『授乳・離乳の支援ガイド』より)

ほとんどの人が、母乳で育てたいと考えているのに対して、実際にやってみると、母乳だけとはいかないのはなぜでしょうか。結果的にどのような栄養方法でも、育児自体の大変さや、その責任の重さに変わりはありませんし、正誤を問うものでもありません。ただし「母乳もミルクも何ら変わりがない」という風潮や誤解、ミルクが育児の必需品だと勘違いさせてしまうような宣伝広告がたくさんあることに気がつくでしょう。これまで説明したように母乳と育児用ミルクの違いは、あります。栄養方法の違いによって、赤ちゃんの健康や成長発達が損なわれることのないように、それぞれの栄養の特徴を正しく知ることで、より安心して育てることができるでしょう。

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(株)とらうべ 助産師・宮里風葵さん
総合病院に助産師として勤務後、現在は(株)とらうべにて、母乳育児を含めた育児相談や、タッチケアの講師として活躍中。

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