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母乳育児のヒント

水野先生のお話<後編>

すべての赤ちゃんに母乳を ~さく乳器と母乳バンクのお話~

母乳哺育について長年研究をされたエキスパートであり、昨年日本で初めて母乳バンクをスタートさせた水野克己先生。母乳育児を続けていく上で大切なことをお聞きした前編に続き、後編はさく乳器や母乳バンクについて伺いました。
<プロフィール>
昭和大学江東豊洲病院 小児内科教授
水野克己先生
国際認定ラクテーションコンサルタント(IBCLC)
水野克己先生のブログはこちら

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母乳育児とさく乳器

ー母乳育児を続ける上でさく乳器の役割は?

 まず、NICU*に赤ちゃんが入院しているお母さんや職場復帰されたお母さんなど「母子分離」の時間ができれば、搾乳が必要になります。また赤ちゃんの飲む力が弱い、うまく飲めないなど、何らかの理由で飲めない赤ちゃんが飲んだ後に搾乳するということもあります。母乳の生成量を増やすという意味では、赤ちゃんが飲んだ後に搾乳するというのは効果的ですね。乳腺炎になった場合は赤ちゃんに飲んでもらうのが一番良いのですが、赤ちゃんが近くにいない場合には、さく乳器が役立ちます。

ーさく乳器は乳腺を痛める?

 それは悪いものを使うからですよね。私のところにきているお母さんで、手搾乳を続けていたら両腕腱鞘炎になってしまった方がいました。その方にはスイングをお薦めしました。「あまりそこでがんばりすぎるよりも、楽に搾乳できるものを使ったほうがいいですよ」とお伝えしました。メデラさんのさく乳器で痛くて使えないというのは、聞いたことがないですけれどね。さく乳器は、手動より電動のほうがいいですね。やっぱり楽なのが一番。搾乳するということ自体が大変なことなので、最も快適な方法でさく乳をしたほうがいいと思います。

NICU*...低出生体重児や先天性の疾患を持った新生児の集中治療室。

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母乳バンクについて

ー水野先生が2014年、日本初の母乳バンクをスタートした経緯は?

 母乳は体液で感染性の物質にもかかわらず、なぜ母乳が出ない場合、他のお母さんの母乳をあげるという状況にあるのか...それはすなわち、未熟な赤ちゃんには母乳がベストであるのに、日本に母乳バンクがないからですよね。欧米でもWHOでもどこの学会でも、もしお母さんの母乳が手にはいらなかったら次に最適なのはドナーミルク*ですと言っています。
 世界中に母乳バンクがあるのに、なぜ日本だけ選択肢がないのか。整備されていないからやむを得ず適切に処理(検査、殺菌など)されていない母乳が使われていることがあるんです。使う、使わないはお母さんや主治医が決めてもいいわけですけれど、使いたいと思っても使えない状況を変えたいと思い、設立しました。

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ーこれまでの利用者は?

 ドナーになってくれた方は2013年から何人かいらっしゃいましたが、実際に使用がスタートしたのは2014年秋から。利用者は低体重で生まれた赤ちゃんたちです。  早産で生まれた場合、お母さんが母乳を出す準備ができていないケースがあります。赤ちゃんの方も体の機能が未熟なため、未熟児網膜症や慢性肺疾患、壊死性腸炎などの合併症を起こしやすくなります。母乳にはこうした疾患のリスクを下げる働きがあります。特に小さく生まれた赤ちゃんにとっては単に栄養源というだけでなく、最も大切な"お薬"であり、粉ミルクには取って代われないものなのです。このため、ドナーミルクをあげることに大きな意味があるんですね。
 赤ちゃんの胃の中に鼻から直接管を入れて、ポンプで1時間かけて低温殺菌したドナーミルクを送ります。赤ちゃんがもう少し大きくなって口から飲めるようになったら、お母さんのおっぱいになるか粉ミルクになるか。お母さんの母乳が出てくれるのを期待したいし、そのためのサポートをしっかりしなければならないと思っています。

ー母乳バンクのドナー登録は誰でもできるの?

 私の外来にかかっている女性であればドナー登録できます。何度かコミュニケーションを取り、母乳がたくさん出て、その方のライフスタイルで母乳に感染性のものが入ってくるリスクがなく、喫煙や飲酒の問題がないことを確認してから血液検査を受けてもらいます。
 さく乳はシンフォニーを持ち帰ってもらい、ご自宅で行います。ドナーのお子さんの年齢は生後3ヵ月くらいの方が多いですね。

ー母乳バンクの今後は?

 現段階ではここ(昭和大学江東豊洲病院)でしかできないので、来年度はすこしずつでも広げていきたいですね。いずれは母乳バンク事業団を立ち上げて、そこで基準を満たした母乳を供給していく形にして普及をめざしていきたいと思っています。

ドナーミルク*...母乳が出ない母親に代わり乳児に与える別の女性の母乳

母乳育児に悩むお母さんたちへ

ー水野先生からのメッセージ

 お母さんが母乳育児に悩むというのは、お子さんを愛するがゆえのこと。それは素晴らしいことです。わが子を抱きしめながら、「自分がやってきたことは間違いじゃないんだ」と自分に言い聞かせてあげてください。そしてこれから先、自分にできることは何かということを考えつつ、身近なサポーターや母乳育児の専門家のサポートを受けながらお子さんと向き合っていってほしいですね。

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